ブランディングの手法をマスターすることで「顧客」から中・長期的に選ばれるようになります。Appleのスティーブ・ジョブズも次のように述べています。
情報が完全に過多になり、人々が日々受け取る情報に圧倒されている世界では、ブランドがさらに重要になる。
人々には、日常生活の全ての事柄に選別している時間はない。ブランドは、その選別を助けてくれる。
さて、ブランディングの効果は理解しているけれど、次のような課題を抱えてはいないでしょうか?
- ブランディングの具体的な方法が分からない
- ブランディングする方法をまとめている情報が見つからない
- ブランディングする方法は見たけどピンと来ない
このような疑問に答えていきます。
ブランディングは「ブランド名」、「ロゴ」、「高級品」などと理解されることも多く、これは半分正解で半分不正解です。
本記事では、ブランディングの具体的な方法を3つのステップでお伝えしていきますが、同時にブランディングの本質的な意味まで理解できるような内容になっています。
また、一流から学ぶは大事でして、有名ブランドのディズニーランドのブランディング方法も最後に紹介していきます。
目次
ブランディング方法【3つのステップ】
ブランディング方法は、次の3つのステップで進めていきます。
- ブランドビジョンを掲げる
- ブランドビジョンを具体化する
- 認識できるアウトプットを作成する
3つのステップは、もっとも抽象度の高い①から順番に、②→③と具体化していく作業です。
ブランドビジョン?アウトプット?だと思いますが、用語の解説もしていきますので、さっそく進めていきましょう。
【ステップ1】ブランドビジョンを掲げる
ブランドビジョンの意味は、「このブランドにこうなってほしいと強く願うイメージを、はっきりと言語化したもの」です。
「私のブランドは●●の実現を目指しています」と、置き換えた方が分かりやすいかもですね。
会社であれ、商品であれ、何か目的を実現するために存在します。
なので、そのブランドが何を目指すのかの「方向性」が決まらない限り、ブランディングする意味がありません。
最初のブランドビジョンを掲げる目的は、どこを目指すのか「目的地」を決めることです。
もう少しイメージが膨らむように、ブランドビジョンを掲げる有名企業の事例を2つご紹介します。
スターバックスのブランドビジョン
- 人々の心に活力と栄養を与えるブランドとして世界でもっとも知られ、尊敬される企業になること。
ディズニーランドのブランドビジョン
- 世代を超え、国境を超え、あらゆる人々が共通の体験を通してともに笑い、驚き、発見し、そして楽しむことのできる世界(を創る企業になること)。
実際にサービスを受けたことがあれば、どちらの会社もブランドビジョンに沿った事業活動をしている事が分かります。
このように「未来像」を掲げることで、全体の方向性を定めることができます。
まだ自社でビジョンが決まっておらず、これから考える必要がある場合は、ミッションとビジョン の違いとは?【直感的かつロジカルに解説】をご覧ください。
なお、ブランドビジョンは自分本位では駄目です。常に「自社」と「社会」の2つを意識してください。
- 自社が実現したい未来像
- 社会が実現したい未来像
ここで言う「社会」とは企業を取り巻くステークホルダー(利害関係者)を指します。具体的には次のようなカテゴリーのことです。
- 経営者
- 社員
- 顧客
- 株主
- 国(政府・国際機関)
- 取引先・債権者
- 地域(住民・自治体)
- 地球・環境
ステークホルダーの中に経営者も含まれています。
自社が実現したい未来像を創るためには、このステークホルダーと「共通価値」を創っていく必要があります。
共通価値とは、犠牲になる存在がなく、すべてのステークホルダーが幸福に生きられる価値のことです。
共通価値を創り出していかなければ、最終的には社会的信用を失うことになります。
不正会計や残業代未払いなど、自社や株主の利益を優先するあまり、「社員」や「国」のステークホルダーを犠牲にしてしまった東芝や日産のような状況にまで至ることもあります。
共通価値が創り出す可能性
THE BODY SHOP(ザ・ボディショップ)はご存知でしょうか。イギリスに本社を構える化粧品メーカーです。日本でも100店舗以上を展開しています。
THE BODY SHOPは、「動物実験を行ってはならない」という信念を貫いている会社です。
当時のイギリスの化粧品業界は、化粧品の安全性を確認するために、ウサギの目に化粧品を入れており、実験対象になっているウサギは死んでいました。
ですが、ライバル企業は「動物実験を行っていない化粧品は販売してはいけない」という法案を通そうとしました。
それに怒り狂って、THE BODY SHOPは、お客様400万人から署名を集めて議会に突き付けたという経緯があります。そして、「動物実験を行ってはならない」という法律に変えてしまったのです。
THE BODY SHOPは、化粧品の製造販売を通じて社会変革を行っており、そこで働く社員や足を運ぶ顧客は社会変革の仲間として参加しています。
このように、ブランドビジョンを掲げて共通価値を創り出すことで、社会が企業を支えてくれるようになります。簡単ではないですが、誰もが共感するような「共通価値」を考えることで企業が成長するという学びになる事例です。
【ステップ2】ブランドビジョンを具体化する
ブランドビジョンが決まったら、次はブランドビジョンをさらに具体化していきます。この時点ではまだ「概念的」な言葉や認識の世界です。
ブランドビジョンを実現するために、具体的な戦略を考える部分だと思ってもらえればOKです。
- ブランドコンセプト
- ブランドパーソナリティ
- ブランドプロミス
ブランドは一貫性が命なので、様々な概念でブランドの方向性を維持する必要があります。ただ、抽象概念なので、これを組織全体で共通化させるのが難しいところです。
それぞれ簡単に解説していきますね。
ブランドコンセプトは「世界観」
ブランドコンセプトは「ブランドビジョンを実現するための方向性を示した言葉」です。
ブランドビジョンを実現する方法は無数に存在しますが、その方向性がバラバラだと何を創り出せばいいのか分かりません。「何があればブランドビジョンを実現できるのか?」の道しるべとなるのがブランドコンセプトです。
例として【A】と【B】を見比べてみてください。
【A】様々な食材を揃えたスーパー
【B】高級食材を中心に揃えたスーパー
どちらが「方向性」を決めやすいかと言えば【B】です。【A】は方向性が見えにくく、ブランドコンセプトとしては使えません。
例えば、ディズニーランドであればブランドコンセプトは次の通り。
ディズニーランドのブランドコンセプト
- 夢と魔法の王
ブランドコンセプト→ブランドビジョンと、繋がっているのが何となくは理解できるかと思います。
ブランドコンセプトの具体的な解説は、顧客を魅了するブランドコンセプトとは?|事例と必要性を徹底解説でご覧ください。かなり理解が深まるはずです。
また、これからブランドコンセプトを作る場合は、魅力的なコンセプトの作り方【全6ステップの具体的手順を解説】で解説しています。
ブランドパーソナリティは「個性」
ブランド・パーソナリティとは、次のようなことを指します。
- 会社・商品・サービスを「擬人化」する
- 人格のない会社・商品・サービスから、連想される人間的な特徴を組み合わせることで人格を持たせる
ブランド・パーソナリティは、「機能・性能」では違いを創り出しにくい場合でも、「個性」を創り出すことで肯定的なインパクトを与えることができます。
保険会社のメットライフ生命は、スヌーピーをテレビCMのキャラクターとして採用することで、「思いやりがあって親しみやすい」というイメージを消費者に与えられています。
ブランド・プロミスは「提供する価値の約束」
そのままの意味です。ブランドが約束することをプランドプロミスと言います。具体的には「品質」「機能」などの提供価値のことを指します。
ブランドプロミスは、ロゴやブランド名も含めた複数のブランド要素を約束するものです。どこまでをブランドとして約束するのかは会社によって様々です。
過去にコカ・コーラがペプシコーラとの競争で、甘みの強い「ニュー・コーク」を販売したことがありました。
ところが、この戦略は大失敗。
従来からのファンがクレーム、抗議、訴訟を起こす問題にまで発展して、わずか10週間で「ニュー・コーク」を撤退するまでに至りました。
ブランドプロミスは、キャッチコピーとして打ち出している会社も多いですね。いくつかご紹介します。
ディズニーランド
- 地球で一番ハッピーな場所。
Zoho
- オンラインで働く。
Master Card
- お金で買えない価値がある。買えるものはマスターカードで。
MGM
- MGMはスゴい映画。
ブランドプロミスはキャッチコピーだけではなく、ブランドの体験から感じ取れる部分も多くあります。
Appleの商品は「シンプルで洗練されている」「革新的な技術」「説明書不要の操作性」などが、すでにAppleユーザーの感覚として約束されているものだと思います。
【ステップ3】認識できるアウトプットを作成する
ようやくここからが具体的なアウトプットを作成するステップです。
ブランディングを「ロゴ」とか「ブランド名」だと勘違いされてしまうのは、このステップ3の「認識できる部分」だけを見ての判断かと思います。
「ロゴ」や「ブランド名」はブランディングするための方法論の1つであり、全てでは無いです。ただ、認識される部分が評価と直結するのでステップ1とステップ2と同じぐらい大事です。
神は細部に宿る
このような名言がありまして、最後のアウトプットを細部までこだわり抜きましょう。
具体的に作成するアウトプットは「タッチポイント」の全てです。
ブランディング観点でのタッチポイントとは
会社・商品・サービスと、ブランディング対象者との接点のこと。ブランディング対象者は顧客、社員、取引先など様々。
接点が生まれる部分というのは、その瞬間・瞬間でイメージが決まります。
- いつも「こんにちは」と笑顔で挨拶してくれて気分がいい
- 携帯電話のデザインが自分の好みに合っている
- 野菜ジュースに入っているつぶつぶで健康な気分になる
このように、ブランディング対象者に「独自のブランドらしさ」のイメージを繰り返し与えることができれば、それ以降もファンになってくれます。
例えば、タッチポイントは次のようなものがあります。
- ブランド名
- ブランドカラー
- ロゴ
- 商品の機能・外観
- 雑誌
- TVやチラシなどの広告
- WEBサイト
- 接客
- キャッチコピー
業界によっては多少違いはあるものの、おおよそこんな感じです。
これらのタッチポイントに一貫性が無いと、ブランディング対象者は違和感を感じるようになり、「何を目指しているの?」となってブランディングは失敗します。
参考
ブランド名の決め方は、ブランド名の決め方【全15の発掘方法と評価方法を解説】で紹介していますので併せてご覧ください。
ディズニーランドで3ステップを当てはめてみる
最後に「ディズニーランド」を事例として、3ステップを見ていきましょう。百聞は一見に如かずです。
ブランドとして【ステップ1】→【ステップ2】→【ステップ3】と一貫していることが分かります。
【ステップ1】ブランドビジョン
ディズニーランドのブランドビジョン
- 世代を超え、国境を超え、あらゆる人々が共通の体験を通してともに笑い、驚き、発見し、そして楽しむことのできる世界(を創る企業になること)。
【ステップ2】ブランドビジョンの具体化
ブランドコンセプト
ディズニーランドのブランドコンセプト
- 夢と魔法の王国。
ブランドパーソナリティ
ディズニーランドのブランドパーソナリティ
- 親しみやすい動物キャラクター。
ブランドプロミス
ディズニーランドのブランドプロミス
- 地球で一番ハッピーな場所。
【ステップ3】認識できるアウトプットを作成する
こちらは全部だとボリューム多すぎるので、特徴的なところだけ抜粋します。
商品の機能・外観
ミッキーマウスを始めとする「夢と魔法の王国」のブランドコンセプトを実現するための、キャラクターや、キャスト、アトラクション、グッズです。
(出典元:東京ディズニーリゾートオフィシャルWEBサイト)
TV広告
2012年のディズニーリゾートのブランドストーリーです。結構、感動します。。
WEBサイト
ディズニーリゾートのオフィシャルサイトです。
(出典元:東京ディズニーリゾートオフィシャルWEBサイト)
まとめ
ブランディング方法を3ステップでお伝えしました。簡単におさらいします。
- ブランドビジョンを掲げる
- ブランドビジョンを具体化する
- 認識できるアウトプットを作成する
世の中には③のアウトプットのことをブランディングと言っている人が多過ぎですが、その源泉となっている①と②ありきです。
「ブランドビジョン」や「ブランドコンセプト」などの軸を、どれだけブレないでいられるかが大事だと思います。
今回の記事を参考に、素晴らしいブランディング活動に繋がることを願っています。