ポジショニングでもっとも大切なのは特定カテゴリーの中でNO1になれるかどうかです。そして、ポジショニングマップは「NO1カテゴリー」を発見するために便利なツールとなります。
しかし、ポジショニングマップで軸を決めようと思っても
- 軸には何を設定すればいいんだっけ?
- どの軸が1番いいのだろう?
と悩んでしまう経営者やマーケティング担当者も多いのではないでしょうか?
実はポジショニングマップは、軸の設定が一番の悩みのタネです。
それもそのはず。ポジショニングの軸の組み合わせは無数にあります。無数に選択肢があるからこそ正解はなく、難易度高めです。
そのため本記事では、
- ポジショニングマップの作り方
- ポジショニングマップの「軸」となる要素とアイデア
を解説していきます。
ポジショニングマップで自社の価値をターゲット顧客に知ってもらい、競合よりも優位なポジショニングができるようにしていきましょう。
ポジショニングマップとは?
ポジショニングマップとは何か?は次のとおり。
ポジショニングマップの意味
- 自社と競合の関係性を比較して、自社の立ち位置を明確にするツール
頭の中で競合と比較するだけではなく、実際に「図」を描いて比較していくのがポジショニングマップの特徴ですね。
ポジショニングマップを作る理由
ポジショニングマップを作る理由は2つあります。
ポジショニングマップを作る理由
- 競合とは異なる自社の立ち位置を明確にするため
- ターゲット顧客に必要とされるカテゴリーであるかを確認するため
何の市場リサーチもないまま自社の強みで事業を進めてしまうと、高い確率で同じような商品・サービスは市場に提供されていた、という残念なオチが待っています。
自社は「競合に負けないぐらい商品力はあるんだけどなぁ」という経営者もいるでしょう。
でも、大切なのは顧客がどう感じているかです。
顧客がライバルと同じように感じているのだとしたら、それはポジショニングに失敗しているということです。
参考 》 ポジショニングの意味と目的とは?【初心者向けに分かりやすく解説】
ポジショニングマップを使わなくても、競合と違うポジションを見つけることは可能です。しかし、ポジショニングマップを使えば競合との相関関係を簡単に視覚化させることができます。
なので、ポジショニングマップは必須というよりは、「推奨」のツールですね。
ポジショニングマップの構成
ポジショニングマップは「縦」と「横」の2つの軸で構成されます。縦と横の軸は何を設定するのかのルールは特に定義されていないです。次のように書きます。
この図の中に自社と関連性のある競合を調べて「この会社の商品の位置付けはこのあたりかな〜」と埋めていきます。
ポジショニングマップで成功する4つの要素
「とりあえずポジショニングマップは完成したけど、これでいいの?」
このような状況にならないよう、ポジショニングマップの成否を判断するための観点も紹介します。
顧客の需要と供給がマッチしている
まずはポジショニングマップで作成した自社の立ち位置が、顧客の求めている需要とマッチしているか確認しましょう。
そんなこと当たり前のことだと思うかもしれませんが、競合との差別化ばかりに夢中になっていると顧客のことを忘れてしまうことも意外とあります。
アイデアを出している段階で話が盛り上がり、顧客が欲しいものではなくて自社のやりたいことになってしまうケースですね。。
極端な例ですが、携帯電話のポジショニングマップの軸を「大型-小型」にしたとします。
競合は「小型化」を進めているから「大型化」のポジショニングにしようとしても、大型の携帯電話を求めている顧客はいないため、これは失敗してしまいます。
ポジショニングマップで設定する軸は、顧客の需要を意識しながら設定していくようにしましょう。
そのポジションは顧客の認識を獲得できるか?
ポジショニングマップを作成して、競合よりも優位に立てそうなポジションを見つけたとします。
しかし、顧客にとっては「違いがわからない」というポジションも存在するので注意が必要です。
例えば、いま市販されているパソコンの品質がいい例です。一部のパソコンに拘りがある人からすれば品質の違いに気付くと思います。
でも、一般人からするとどれも品質に違いは感じません。せいぜい「日本製は品質がいい」「中国製は品質が悪い」というイメージぐらいじゃないでしょうか。
なので、いくら顧客にとって必要性を感じているポジションであったとしても、それは顧客にとって理解できるポジションでなければ意味がないということです。
ポジショニングの考えでは事実よりもイメージの方が遥かに大切になります。
決めたポジショニングは自社の得意分野か?
ポジショニングする場所は、自社の能力で提供できることで設定してください。
どれだけ優位なポジショニングマップを見つけたとしても、自社(自分)のスキルでは不可能なことでポジショニングすると信用失墜に繋がります。
例えば、イタリアンレストランで「最高の接客サービス」という軸を1つ使ってポジショニングしたとします。
このポジショニングに基づいて4P(Price=価格、Product=商品、Place=場所、Promotion=販促)は実行するのですが、広告イメージのままお店を訪れた顧客に対してスタッフが無愛想な接客をしたらどうでしょうか。
おそらく、もう2度と訪れることはなくなるでしょう。
また、それだけにとどまらず、どれだけ最悪だったのか口コミやSNSなどで拡散される可能性だってあります。
ですので、できないことでポジショニングしてしまうと逆効果の結果を生んでしまいますので、絶対に実現できないことは公言しないようにしてください。
Ready・Fire・Aim(構えて・撃って・狙え!)
- さっさとポジショニングを決めたら行動する
- そのあとにPDCAで改善を繰り返していく
これが一番重要な要素だと思います。
Ready・Fire・Aimは、「構えて、撃って、狙え」という意味です。「あれ?なんか順番おかしくない?」と感じたかもしれません。
普通は狙ってから撃ちますよね。弓道試合のように限られた回数しかマトを狙えないなら「構えて、狙って、打て」が正しいとは思います。
ですが、ビジネスでは違います。
ポジショニングで時間を使ってしまうよりも、少しでも早く市場に提供してしまう方がいいです。市場の反応が悪ければポジションを変更すればいいだけの話です。
世の中には100点満点のものは存在などしないため、完璧を求めないで行動に移すようにしてみましょう。
補足
闇雲にポジショニングを変更することをお勧めしているわけではありません。会社の規模によっては容易にポジショニングを変えることが難しい場合もあります。
ポジショニングマップの作り方【4STEP】
ポジショニングマップの作り方について解説していきます。ポジショニングマップは、全部で4つのステップで完了です。
STEP1.購買決定要因を決める
ポジショニングマップの2つの軸は「購買決定要因」で決めます。購買決定要因とは「顧客が買う動機」です。
ポジショニングマップで使う軸は何となく決めてはダメです。きちんとターゲットにしている顧客が購入する動機となる軸を設定する必要があります。
例えば、「価格が安いから買う」とか「デザインが好きだから買う」というものです。
まずは自社(自分)のターゲット顧客に限定しないで、一般的なターゲットの購買決定要因も含めて書き出します。
例えば、スマートフォン市場での一般的な顧客の購買決定要因は次のとおりです。(一部抜粋)
例:スマートフォンの購買決定要因
- バッテリーの長さ
- 充電にかかる時間
- 広告イメージ
- デザインのよさ
- 機能が多い
- 大きさ
- 操作性
- 価格の安さ
- ディスプレイの大きさ
STEP2.ターゲットの購買決定要因に絞り込む
一般的な購買決定要因を書き出したら、次は自社のターゲット顧客が重要視する要素に絞り込みます。
ここでは、ターゲット顧客の購買決定要因が「自分の個性を表現できるデザインにすること」と「機能性よりもスマートフォン操作を簡単にできること」を重視していると仮定します。
STEP3.ライバルとのポジションを比較する
ライバルリサーチをして自社と競合の立ち位置を確認していきます。
例えば、自社の強みは「デザイン性」「操作性」「ディスプレイの大きさ」が競合よりも優位性を持っていますが、「バッテリーの長さ」や「価格の安さ」などは負けています。
スマートフォンの 購入決定要因 |
ターゲット顧客の 購入決定要因 |
自社 | ライバル |
バッテリーの長さ | △ | ◯ | |
充電にかかる時間 | △ | ◯ | |
広告イメージ | ◯ | ◎ | |
デザインのよさ | ◎ | ◎ | △ |
機能が多い | ◯ | ◯ | ◎ |
大きさ | △ | ◯ | |
操作性 | ◎ | ◎ | ◯ |
価格の安さ | △ | ◯ | |
ディスプレイの大きさ | ◯ | ◎ | ◯ |
理解しやすくするために2社だけで比較をしていますが、実際には複数の競合が市場には存在するため、競合の数だけ比較を行なっていきましょう。
STEP4.ポジショニングマップを作成する
最後のステップです。それぞれ比較した結果をもとにポジショニングマップを作成していきます。
ポジショニングマップを作り終えたら「顧客視点で競合と明確な違いを打ち出せているか?」を確認するようにしてください。
ポジショニングマップの軸の決め方
次にポジショニングマップの軸の切り口についてご紹介していきます。
これが絶対に正解というのはないのですが、成功事例からアイデアの参考にはなるはずです。
ブランド提供価値でのポジショニングマップの事例
自社(自分)の商品・サービスが提供している価値を軸にしたポジショニングマップの作り方です。
顧客に提供できる価値というのはいくつも存在すると思います。その中からライバルにはない自社の強みとなる提供価値を軸に取ります。
例えば、ハンバーガー業界の2トップをポジショニングマップを使って比較してみると・・・。
マクドナルドは「早くてボリュームがある」という価値提供しているのに対して、モスバーガーは「新鮮で質が高い」という提供価値の軸をとっていることが分かります。
【例】ブランド提供価値の軸
- 短期間で習得できる
- 簡単にできる(難易度)
- 楽にできる(疲労度)
- どこにいても効果を得られる
- 効果が続く
- 忙しくてもできる
- 再現性がある
- 権威性や資格が手に入る
- 楽しい気分になれる
- 深い悩みを解決できる
- 即効性がある
- 癒される
- 安心感が手に入る
- 高品質
商品属性に基づくポジショニングマップの事例
商品・サービスの持っている属性を軸にしたポジショニングマップの作り方です。
属性というのは商品が固有にもっている特徴のことをいいます。
例えば、スマートフォン市場。iPhoneは「シンプルさ」と「デザイン」を追求しているのに対して、Androidスマートフォンは「多機能」と「高品質」でポジショニングしています。
スマートフォン市場での利益の86%がiPhoneという驚異的なシェア(2017年時点)を持っているのですが、これはAndoridスマートフォンメーカー600社の5倍の数字です。
これほどまでにiPhoneが市場を独占しているのは、ユーザーフレンドリーなデザインと操作性にあると言えます。
iPhoneよりもAndroidスマートフォンの方が機能面や品質で優れていることは多くの専門家が唱えていますが、求めている機能や品質を超えた過剰なサービス提供によるものです。
【例】商品属性の軸
- 親しみやすさ
- 高級感
- 多機能
- ユーザーフレンドリー
- シンプル
- ファッショナブル
- 大きい
- 小さい
- 重い
- 軽い
- おしゃれ
- 気軽
- 多い
- 少ない
- デザイン
- さわやか
- 苦味
- カジュアル
- フォーマル
- テイクアウト
- 滞在型
- 本業
- 副業
- リアル
- インターネット
- 実践型
- 理論型
- 新しい
- 伝統的
- ツール提供
- 個別指導
- グループコンサル
- セミナー
- 個別指導
- グループコンサル
- セミナー指導
- オンラインサロン
- ツール提供
- 実績
- 経験値
利用される場所に関するポジショニングマップの事例
利用される場所(空間)を軸にしたポジショニングマップの作り方です。
多くの人が夏に海へ行くとスイカ割りをするように、利用される場所でのポジショニングもかなり有効な方法です。
海でスイカ割りをする必要はないはずですが、夏になると多くの人の頭の中に連想されますよね。メロン割りだっていいはず。
【例】利用される場所
- 山・海・川
- オフィス内・外
- 自宅用
- 会議用
- 商談用
時間に関するポジショニングマップの事例
商品・サービスを使用する時間を軸にしたポジショニングマップの作り方です。
アサヒ飲料の「ワンダモーニンングショット」は、朝にコーヒーを飲む人が40%もいたため開発された商品です。
個人的にはコーヒーに「朝専用」も「夜専用」も大差ないと思うのですが、「目覚めの一杯」と言われると飲みたくなる心理が働くのでしょう。
このポジショニングのお陰でコーヒー業界5位から3位に浮上することができました。
【例】時間の軸
- 朝
- 昼
- 夜
利用シーンに関するポジショニングマップの事例
利用シーンを軸にしたポジショニングマップの作り方です。
同じくコーヒー業界の事例がわかりやすいと思います。「コーヒーギフトはAGF♪」という耳に残るフレーズをどこかで聞いたことはあるでしょうか?
一般的にはコーヒーというのは、会社や家庭用だったりするものです。でも、AGFではギフト用という利用シーンに対してポジショニングすることに成功しています。
【例】利用シーンの軸
- ギフト用
- 誕生日プレゼント用
- バレンタイン用
利用者(ターゲット)の種類に基づいたポジショニングマップの事例
商品・サービスを購入する対象が誰かを軸にしたポジショニングマップの作り方です。
このターゲットを変えるだけで新しい商品・サービスが生まれることもあります。
任天堂Wiiはターゲット顧客を「家族向け」にすることで成功している事例です。
任天堂のミッションは世界中のゲーム人口を増やすことなので、どうやったらゲームに対して否定的な人たちもゲームをやりたくなるだろうか?ということから考えられました。
一般家庭では「ゲームのやりすぎは悪いことだ」と思われているところも多いでしょうから、この家族を巻き込んだWiiの戦略は素晴らしすぎる発想です。
競合であるソニーのPlayStationは、個人のヘビーユーザー向け商品になっていて、Wiiとは異なるポジションであることが分かります。
【例】ターゲットの軸
- 男性向け
- 女性向け
- 家族向け
- 子供向け
- 大人向け
- 法人向け
- 中小企業向け
- 大企業向け
- 個人事業主向け
プロセスに基づいたポジショニングマップの事例
商品・サービスを購入するまでのプロセスを軸にしたポジショニングマップの作り方です。
商品を購入するまでには「どうしようかな?」と悩むポイントっていくつかありますよね。
例えば、生命保険業界の事例について。
生命保険を購入するまでには大きく分けて4つのステップがあります。
(1)必要性を感じる
↓
(2)検討する
↓
(3)契約する
↓
(4)見直しする
日本の生命保険会社は40社以上あります。(2018年7月時点)
各社で保険商品を複数扱っていて、顧客の立場からすると「どの保険が自分に一番合っているのだろう?」ということが悩みの種でした。
すべての保険会社に相談するにも時間は掛かるため、それぞれが自社の保険商品を売りたいがために営業される可能性だってあります。
このような悩みを解決するために「検討」というプロセスに対してポジショニングしたのが「保険の窓口」です。
保険業界でのカテゴリーで大きな違いを認識させたポジショニングの事例となります。
【例】プロセスの軸
- 検討
- 選定
- アポイント
- クロージング
- ファーストキャッシュ
- 中長期的な安定収入
- 転職
- 新卒
商品カテゴリー別のポジショニング
商品カテゴリーを変えることで軸をとるポジショニングマップの作り方です。
スーバーやコンビニで販売されているシリアルが分かりやすい事例となります。
昔はシリアルはお菓子コーナーに陳列されていて「朝食で手を抜く悪いお母さん」というイメージがあったため販売数に伸び悩んでいました。
そこで、商品カテゴリーを「お菓子」から「朝食」というポジショニングにスイッチするようにしたのです。
実際にお菓子コーナーからパンコーナーに並べられるようになり、朝食の栄養価の高い商品としてイメージを変えることに成功しました。
あるカテゴリー内ではニーズのないポジションでも、別カテゴリーに変えた途端にニーズが生まれることもありますので、いろいろとカテゴリーを変えてみると有効な切り口にならないか検討するのがいいと思います。
これも人のイメージがどれだけ重要であるかの学びとなる事例ですね。
競合ブランドとの関係性に基づくポジショニングマップの事例
競合ブランドとの比較を軸にしたポジショニングマップの作り方です。
コーラ戦争って聞いたことあるでしょうか?Wikipediaにも掲載されるようなビジネス史の伝説になっています。
ペプシがコカ・コーラに徹底的に攻撃を仕掛けて一時期は売上シェアを逆転することがありました。
ペプシは若者向けに新世代のコーラとして人気を集めたのですが、コカ・コーラはペプシの追従を恐れて「ニュー・コーク」と呼ばれる新しいコーラを販売。
すると伝統的な味が損なわれたと長年の愛用者からは猛反発を受けて、コカ・コーラの売上は激減することになったのです。
これはコカ・コーラという存在を消費者へ意識させながら、自社のポジションをうまく確立させた方法となります。
実はこのあとにセブン・アップが「コーラではない飲み物」として、コカ・コーラとペプシに次ぐ炭酸飲料してポジショニングに成功しています。
最後に
ポジショニングマップの作り方から事例までを一通りご紹介させていただきました。
これまでの情報をおさらいすると次の通りです。
- ポジショニングマップは自社と競合を比較して、自社の立ち位置を明確にするツールである
- ライバルと比較するだけではダメで、顧客の立場から必要とされるポジションであることを確認する
- 思考ばかりするよりも、作ってみたら市場に投入してテストしてみる
- 過去の成功事例を参考にしてアイデアを発見する
思考する習慣がないと最初は大変ですが、慣れくると「こんな軸の取り方もあるんじゃないか?」とアイデアが出てくるようになりますので場数を踏むことをお勧めします。