ミッションやビジョンの存在は、会社において中核を成すものです。ですが、いざ会社のミッションやビジョンを検討する際にこのような悩みはないでしょうか?
ミッションとビジョン の違いは?と聞かれて正確に答えられない
他の会社のミッションとビジョンを参考に調べてもしっくりこない
様々なメディアで、ミッションやビジョンに関する情報は公開されていますが、概念的で抽象度が高いため、いまいち直感的に理解することが難しいものです。
本記事では、ミッションやビジョンの意味や目的について、それぞれの違いが直感的かつロジカルに理解できるような構成でお伝えしていきます。
ミッションやビジョンの違いを理解できると同時に、これから自社でどのようなミッションやビジョンを掲げればいいのかが実践できるようになります。
自社でミッションやビジョンを定義し、社内に浸透さえできれば、景気に左右されない強い組織へと変わりるため、ぜひ役立ててください。
目次
ミッション・ビジョンの違いとは?意味と目的を定義する
まずはミッション・ビジョンの辞書的な意味を確認しておきましょう。
ミッションの辞書的な意味(三省堂 大辞林、広告用語辞典)
- 任務。使命。
- 企業の果たすべき目的。企業の存在理由。
ビジョンの辞書的な意味(三省堂 大辞林)
- 将来のあるべき姿を描いたもの。将来の見通し。構想。未来図。未来像。
- 見えるもの。光景。ありさま。
辞書の意味合いから、どちらも「未来を指し示す何か」であることが分かります。ですが、「ミッションとビジョンの違いは?」という問いの回答として、まだまだ腹落ちできる内容ではないと思います。
ミッションとビジョンの違いを直感的に理解するためには、木の「種」「根」「幹」「枝葉」「果実」に分けて考えてみると分かりやすくなります。
ミッションの意味と目的
ミッションの意味
ミッションは例えるなら、目に見える形になる前の「種」です。種は木が生い茂り、果実を実らせるための「源」となるものです。
りんごやぶどうなど、大きさや形などは違っていても、同じ種類の「種」であれば同じ果実が育ちます。
企業活動においては「何のために事業をするのか?」の存在理由となります。すべての企業活動の根幹となる部分であり、本来は同じ会社に属する組織全体が共通して持っているものです。
また、会社は経営者や株主などの特定人物の所有物ではなく、経営者や株主なども含む社会全体のために存在しています。
そのため、ミッションとして掲げるメッセージは「人々が必要とする社会の利益」に繋がっている必要があります。
ミッションの実務的な意味
何のために事業をするのか?の存在理由であり、人々が必要とする社会の利益に繋がる活動目的のこと。
ミッションというのは、「美味しいりんごを味わいたい」「大きいぶどうを食べてみたい」と言ったように、未来に創り出したい結果があるからこそ生まれるものです。
ですので、企業活動でミッションを掲げる場合も、理想と現実に何かしらギャップがあるからこそ生まれます。
ミッションの目的
個でも会社組織でもミッションの目的は同じで、事業を通じて社会の利益に繋がる活動を実現することです。
会社組織で特に重要視される理由は、組織がバラバラにならないよう、目的実現に向けて足並みを揃えるためです。
個の目的がバラバラであれば、力が分散してしまい、本来の目的を達成することが難しくなってしまいます。
そもそも会社組織にする目的は、個では実現できないことを、それぞれの強みを活かして集団となることでミッションを実現するためにあるのです。
ミッション作成の例
ミッションは、メッセージ以上に「なぜ?」の動機がとても重要です。人々が共感するものでなければ組織はまとまらないからです。
【例】食料自給率の問題
日本は食料自給率が約40%で、先進国の中では最低水準となっている。
不足分をこのまま輸入に頼っていては、世界人口が右肩上がりに増え続ける中で、日本に栄養のある十分な食料を供給できなくなる時代が来るかもしれない。
未来の子どもたちのために、健康で食料に困らないような世の中にしたい。
この例で言えば、「日本の食料自給率を高め、栄養ある十分な食料を届け続ける」ことがミッションと言えます。
ミッションだけでは足りない理由
ミッションの意味や目的をお伝えしましたが、結局のところ、これだけではどういう結果を実現すればミッション達成となるのか判断することが難しいです。
例えば、先ほどの「日本の食料自給率を高め、栄養ある十分な食料を届け続ける」というミッションでは、「栄養ある十分な食料を届け続けるために、何を実現すれば達成と判断できるのか?」の具体的な将来像がぼんやりしています。
そのために、組織全体として「具体的に何を実現するのか?」を共有しておく必要があるのです。それがビジョンです。
ビジョンの意味と目的
ビジョンの意味
ビジョンは例えるなら、「種」から育て上げた「果実」です。水や栄養を与え続けることで生みだされる「結果」です。
「種」をどれだけ丁寧に、正しく育てられるかで、枝葉に実る「果実=結果」は違うものになります。
ビジョン(Vision)の辞書的な意味として「見えるもの。光景。ありさま。」ということが書かれていました。つまり、ビジョンには「映像」が含まれます。
また、「種」から育て上げた「果実」なので、ミッションからビジョンは生み出されるものです。
企業活動においては、ミッションを実現した姿(将来像)です。
当時のアメリカ大統領ジョン・F・ケネディが、1961年にこのようなビジョンを口にしました。
60年代待つまでに人類を月に立たせ、安全に帰還させよう。
情景(映像)が浮かぶ、とても明確なビジョンであると言えます。
ビジョンの実務的な意味
ミッションから生まれるものであり、ミッションを実現した具体的な姿(将来像)のこと。
ビジョンの目的
ミッション実現に向けて、組織全体が1つにまとまる結束力が生まれます。また、社内だけにとどまらず、活動そのものに共感して応援する人たちが現れるようになります。
例えば、積極的に知的障害者を採用する日本理化学工業では、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)や早稲田大学が力を貸してくれました。
また、近江商人の末裔が経営しているCLUB HARIE(バームクーヘン専門店)では、社員だけで販売店の裏に村を作っているのですが、この活動がモチベーションとなり、組織全体の連帯感を創り出しています。
(CLUB HARIE店舗内に展示されているビジョンマップ)
【結論】ミッション・ビジョンの違いとは?
ミッションとビジョンの違いについて、それぞれ意味や目的をお伝えしてきましたが、これまでの内容をまとめていきます。
ミッションとビジョンの違い
- ミッションとは、何のために事業をするのか?の存在理由であり、人々が必要とする社会の利益に繋がる活動目的のこと。
- ビジョンとは、ミッションから生まれるものであり、ミッションを実現した具体的な姿(将来像)のこと。
- つまり、ミッションとビジョンは「原因と結果」の因果関係にある。
ミッションとビジョン以外の3つの関連要素
ミッションからビジョンの違いを知るために、「根」「幹」「枝葉」3つの関連要素も覚えておくと、より理解が深まると思いますのでご紹介しておきます。
木は「種」から始まり、「根」→「幹」→「枝葉」→「果実」と、それぞれが影響し合って成長していきます。
置き換えると、会社のミッションやビジョンを実現するためには、途中のプロセスが大事だということです。
根(責任範囲)
木の根は、水や栄養を幹や枝葉に送ることや幹を支えるなど、重要な役割を担っています。
立派な根を張り巡らせるには、「どこまでが自社の責任範囲だと考えるか?」に影響していきます。
自社の売上や利益だけを考えるのか、社員や社員の家族の幸せ、または地域社会への貢献までを責任範囲だと考えるのかでは根の張り方は違うということです。
責任範囲が大きいほど、細かく強靭な根を張り巡らせることができます。そして、根がしっかりしているほどに、大きな幹を支えることが可能となります。
幹(本氣・価値観・信念)
木の幹の役割は、根から送られた水や栄養を枝葉に橋渡しすることや、枝が折れないように支えることなどです。
幹を大きくするためには、「どれだけ本氣で取り組んでいるか?」「ビジョン実現に必要な価値観や信念で実践しているか?」に影響してきます。
そこそこの努力でうまくいったらいいと思って取り組むのと、本氣で「絶対に実現するんだ!」という想いで取り組むのかでは幹の育ち方は変わってきます。
木の根がしっかりしていると、大きな幹が育ちます。これは、大きな責任を持つほどに本氣になれるということでもあります。
枝葉(知恵・工夫・戦略・戦術)
枝葉は最終的に「果実」を実らせる役割です。枝葉は方法論(How to)に当たります。
具体的には、知恵を絞り、工夫を凝らし、戦略・戦術を練ることでビジョンを実現させるのです。
枝葉がしっかりして十分に栄養が行き届いていれば、美味しい果実ができます。何事も本氣になれば知恵が出てくるのと同じですね。
まとめ
ミッションとビジョンの違いについてお伝えしました。ミッションとビジョンは「結果と原因」の因果関係にあるということです。
立脚点となるのは原因であるミッションであり、そのあとに結果のビジョンが生まれます。
自社の中で、ミッションが定まっていてビジョンが見えないのであれば、ビジョンを検討するようにしましょう。
ビジョンが定まっていて、ミッションが不明確であれば「何のために自社は存在するのだろう?」と自らに問いかけてみてください。