ポジショニング戦略で、自社(自分)の強みでポジションを見つけるために、業界内にライバルが多すぎてなかなか最適なポジションを見つけることは難しいものです。
それもそのはずで、リサーチ会社の結果では消費者が企業広告を見る数は1日1,000件以上にのぼります。
その中から自社(自分)を顧客から選んでもらうためには、ライバルとは違うポジションを獲得する必要があります。
ですが、「自社(自分)で決めた新しいポジションがうまくいくのか?」や「どうやってポジショニング戦略を考えたらいいのか?」と分からなくなってしまいますよね。
でも、実はポジショニング戦略の「基本の型」というのは決まっています。
過去のポジショニング戦略の成功事例にある「基本の型」をしっかりと学んでいくことで、考え方や失敗しないアイデアを手に入れることは可能です。
そのため、この記事では「ポジショニング戦略でライバルに真似されない全18の方法と事例」についてお伝えしていきます。
ポジショニング戦略で、まだ自社(自分)のポジションを見つけられないのであれば、全18の方法と事例から独自のポジションを発見していきましょう!
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ぜひ、過去の成功事例からアイデアをTTP(徹底的にパクる)してくださいね!
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目次
ポジショニング戦略の目的は「戦わずして勝つ」こと
ポジショニング戦略の目的は「差別化」ではなくて「独自化」です。
差別化は業界内のリーダーブランドと戦う戦略のことで、独自化はリーダーブランドとは戦わない戦略となります。
差別化を勧めない理由は、業界内のリーダーブランドは大きな資本力を持っているため、真っ向から競争すると真似されて事業撤退を余儀なくされてしまうからです。
例えば、投稿したコンテンツが消えるSnapchat(スナップチャット)というサービスがあります。過去にFacebookから買収を試みたのですが不成立で終わっています。
その後、FacebookはSnapchatと同等の機能(ストーリー)をFacebookやInstagramに導入しており、Snapchatの市場をみるみる奪ってSnapchatのユーザー獲得数を超えたのです。
SnapのCEOのエヴァン・スピーゲル氏は丸パクリしたFacebookに対して以下のコメントを残しています。
もしクリエイティブな企業でありたいと思ったら、自分が素晴らしいものを作り出し、人々が自分のプロダクトをコピーしているという事実を基本的に楽しみ、心地よいと思わないといけない。
僕自身も丸パクリするようなビジネスモデルを好ましく思わないのですが、現実問題このように資本力のある企業に真っ向から立ち向かうとSnapchatの二の舞になってしまいます。
ですので、あなたが現時点でリーダーブランドよりも資本力で勝らないのであれば、「差別化」ではなく「独自化」を目指していきましょう。
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特にこれから事業を大きくしていく場合は、弱者の戦略を取らないと難しいんですよね。
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ポジショニング戦略の本質は、限られた資源(ヒト、モノ、カネ、情報)をいかに効率よく使って、独自のポジションを確立できるかです。
現時点での会社(自分)の状況やライバルとの関係によって、最適なポジショニングは変わっていきます。
ポジショニング戦略を実践する前に決めること
そもそもポジショニング戦略で自社(自分)の立ち位置を決める前に、「誰のための商品・サービスか?」を決めておく必要があります。
ターゲットにする顧客が決まっていないとポジショニング戦略は実践できないからです。
例えば、牛丼チェーン店に「吉野家」と「すき家」があります。
どちらも同じ牛丼屋ですが、吉野家のターゲットは「働くサラリーマン男性」であるのに対して、すき家は「ファミリーや女性向け」にポジショニングしています。
そのため、吉野家とすき家の店内イメージやメニューが誰向けに作られているのかの違いを感じられないでしょうか?
例えば、吉野家はカウンター席だけの店舗が多いのに対して、すき家はテーブル席が用意されています。
ターゲットが明確でない状態でポジショニングを決めてしまうと確実に失敗してしまいますので、必ず誰向けに商品・サービスを提供するのかを事前に決めておきましょう。
ポジショニング戦略を完成させる2STEP
ポジショニング戦略では「ライバル視点の独自化」と「顧客視点の価値提供」という2つの視点を同時に満たす必要があります。
ライバル視点での独自化というのは、すでに市場でポジションを獲得しているライバルとは違うカテゴリーで真似できないポジショニングをするということです。
例えば、アイスクリーム業界ではガリガリ君は「子供用アイスクーム」でポジショニングしているのに対して、ハーゲンダッツは「大人用のアイスクリーム」としてポジショニングしています。
ハーゲンダッツは大人用のブランドイメージが出来上がっているため、ガリガリ君のような子供用アイスクリーム市場で真似するのは難しいです。
つまり、両者ともに独自化されている領域ということになります。
次に顧客視点の価値提供とは、まだ世の中にある商品・サービスで顧客が満たされていないニーズを満たすことです。
ポジショニング戦略で忘れていけないことは、すでにある商品・サービスで満たされていない顧客に新しい価値を提供することです。
いくらライバルと違いがあるからといっても、ターゲットにしている顧客が求めているものでなければ商品・サービスが売れず意味はありません。
また、すでにライバルが同じ商品・サービスを提供していて市場から認知されている場合、後発で同じ条件のものを提供しても失敗してしまいます。
顧客視点から見ると「何が違うんだろう?」となって、どうせなら信頼性のあるところ(先にポジショニングに成功しているところ)から購入しようという結果になるからです。
そのため、「ライバル視点の独自化」も「顧客視点の価値提供」も、顧客から選んでもらうためにはどちらか1つを満たすのではなくて両方を満たさなければならないのです。
ライバル視点の独自化
まずはライバル視点で会社(個人)のポジショニングを決めます。
ポジショニング戦略では、ライバルとの比較で使える方法として「ポジショニングマップ」というものがあります。
ポジショニングマップでは、「縦」と「横」の2つの軸で分割して作っていくのですが、軸の選択は無数にあるので効果的な軸の選択が必要です。
例えば、amazonと楽天の場合は図のようなポジショニングマップになります。
amazonも楽天も同じネットショップですが、それぞれ別々のユーザーニーズに応えるポジショニングです。
amazonは購入から配送までの時間短縮を徹底的に効率化しているのに対し、楽天はドンキホーテのように商品を観る楽しさを提供するポジショニング戦略をとっています。
このようにポジショニングマップは、ライバルと重ならないようにポジショニングしていくところがポイントです。
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独立性のある2軸で作成
ポジショニングマップで作る2つの軸は、それぞれが独立性のあるものにしてください。
例えば、「機能」と「価格」という軸を設定したとします。通常は「高機能」になると「高価格」になるため、この2つの軸は独立性がないと言えます。
それぞれの軸に独立性がないと効果的なポジションを作れなくなってしまいます。
購買決定要因で2軸を決める
購買決定要因というのは、顧客が商品・サービスを購入する際の動機になる要因のことです。ポジショニングマップの2軸はそれぞれが購買決定要因にしてください。
例えば、以下のような軸がありますので参考にしてもらえればと思います。
[aside type="boader"]- 価格帯
- 時間(早さ)
- 時間(結果)
- デザイン
- 地域
- 販売方法
- 感性
- 数量
- ターゲット(性別)
- ターゲット(年齢)
- ターゲット(単位)
- 大きさ
- 重さ
- 空間
- ボリューム(量)
- シーン
- プロセス
- 緊急性
- 重要度
- 機能性
- 難易度
- 持続性
- 接客
- 実績
- 文化
- 実現方法
購買決定要因が3つ以上でてきた場合は、その中でも優先順位の高い2つに絞るようにしましょう。
ポジショニングマップの組み合わせはいくつもできますので、なるべく沢山の組み合わせを作ってみてください。
完璧さを求めて検討する軸の組み合わせが少なくなると、それだけいいポジションの発見に繋がらないからです。
「こんな組み合わせはどうだろうか?」とパズルを組み立てるような気持ちで試してみるのがいいと思います。
顧客視点の価値提供
ポジショニング戦略では顧客視点を持つことは必須です。
ポジショニングマップでは、ライバルとの相関関係を見ることはできるのですが、2つの軸からは顧客が登場することはありません。
具体的には以下のポイントで、ポジショニングマップとの整合性が取れているか(意味のあるポジションか?)の判断が必要となってきます。
[aside type="boader"]- 理想の顧客像が解決したい悩み
- 会社(個人)が提供する独自の価値(USP)
- 顧客が手に入れられる理想世界
理想の顧客像が解決したい悩み
会社(個人)がターゲットにしている理想の顧客像が抱えている悩みを定義します。
会社(個人)が提供する独自の価値(USP)
新しいポジションから、会社(個人)が提供する独自の価値(USP)を定義します。
USPの考え方はこちらの記事をご覧ください。
[kanren postid="850"]
顧客が手に入れられる理想世界
新しいポジションから商品・サービスを提供することで、最終的に顧客がどのような理想世界を手に入れることができるのかを定義します。
理想世界を定義することを「ブランドコンセプト」といいます。ブランドコンセプトについて詳しくはこちらの記事をご覧ください。
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ポジショニング戦略の3つの型
ポジショニング戦略には大きく分けて3つの型があります。
ライバルと棲み分ける「ニッチ戦略」と「不協和戦略」。棲み分けるというのは業界リーダーブランドとの直接対決を避けて真似できないようにする戦略です。
もう1つはライバルと共存していく「協調戦略」。こちらも業界リーダーブランドと直接対決しない点は同じで、リーダーブランドと事業を共有する戦略です。
ニッチ戦略
ニッチ戦略とは「まだニーズが満たされていない隙間市場で商品・サービスを提供すること」を言います。
あまりにも小さすぎたり、特殊なニーズであるため参入できないような市場です。
通常は業界のリーダーブランドは人件費や設備費用などの固定費が多くかかる傾向にあります。
そのため、ニッチな市場では固定費よりも大きな売上を出すことが難しく、参入を諦めるということがあるのです。
このようにニッチ戦略は、リーダーブランドが狙わないような隙間を積極的に狙っていきます。技術的には真似できても参入ができません。
ニッチ戦略は「質」と「量」の2軸で考えていきます。これだけでは意味が分からないと思うので詳しく説明しますね。
ニッチ市場はライバル(特に業界内のリーダーブランド)に真似されていはいけない領域です。
そのためには「意図的にライバル参入を抑止」させる必要があります。要するに意図的に自社(自分)が優位な市場となるようにコントロールする戦略を取るということです。
そこで「質」と「量」を使って限定的にしていきます。
ここでいう「質」というのは、自社(自分)がライバルよりも強みとなっている分野に特化するということです。
例えば、ライバルよりもある事業の実績やノウハウが多くあれば、あらゆるリソースを集中させてしまいます。
業界内のリーダーブランドは総合力ではベンチャー(または個人)よりも勝っていますが、全ての事業でNO1であるとは限りません。その隙間を狙っていきます。
そしてもう1つの「量」とは市場の大きさのことです。量をコントロールすることで固定費の高さから利益の出ないリーダーブランドの参入を防ぎます。
不協和戦略
不協和戦略は「何かしらの不都合が生じてライバルが真似できない」ことを言います。不協和とは2つ以上のものが適合しないという意味です。
例えば、下記のようなイメージです。ライバルが「四角が正解です!」と言っているのに対して、自社(自分)は「丸が正解です!」という立場を取ったとします。
ライバルは「四角が正しい」と散々言ってしまっているので、いまさら「丸も正しい」とは言えなくなってしまうんですね。
この不協和戦略は、ライバルの強みを逆手にとってしまうという戦略とも言えます。
協調戦略
協調戦略とは「ライバルと競争しないで共存していく」ことを言います。
例えば、スマートフォンのアプリケーションはまさに協調戦略です。アップルはiPhone(iOS)で動かすためのアプリケーション開発環境や販売窓口を提供しています。
そして、アプリケーション開発元は、iPhone(iOS)上で動くサービスとして販売することができます。
このように、アップルとアプリケーション開発元は競争することなく双方に売上を伸ばすことができて共存する戦略をとっています。
マインド・シェアを狙っていく
ブランディング観点から、3つの型はマインド・シェアを獲得するようなマーケティング活動をするといいです。
マインド・シェアというのは「この分野にはこの商品・サービス」しかないというブランド専有率のことを言います。
要するにどれぐらいの割合で顧客のハートを鷲掴みにしているかの指標です。ブランドの専有率が高いほど優先的に顧客から選ばれやすくなります。
マインド・シェアは会社(個人)の思惑ですぐに作れるものではないので、じっくり時間をかけて育てていくものです。
そのためには、以下の2点を意識しながらマーケティング活動をしていきましょう。
[aside type="boader"]- ポジショニングをコロコロと変更しない
- 市場に認知されたポジショニングに一貫性を持たせること
ここの商品・サービスを購入すると「必ずこの結果が手にはいる」という繰り返しによってマインド・シェアは作られていきます。
もちろん市場のニーズに合わせてポジショニングは変えていくことも必要にはなるのですが、大きな軸となる部分は頻繁に変えてはいけません。
ニッチ戦略10の事例
ニッチ戦略は全部で10個の戦略があります。
それぞれの戦略について具体的な事例を交えながら解説していきますね。
事例に出てくる会社の事業規模は大きいのですが、アイデアの本質は会社の大きさには関係ないため、自分の会社(個人)に置き換えた場合を想定してみてください。
技術ニッチ戦略
技術ニッチ戦略とは、ライバルが大きな資本力を持っていたとしても、ライバルの真似できない技術に資源を集中させる戦略のことです。
マニーという医療機器メーカーがあります。「世界一の品質でないと市場に出さない」というポリシーを持っている素晴らしい会社です。
強いポリシーであることから、マニーが製造している虫歯の根を削る器具は世界シェア35%、白内障手術で使われる眼科ナイフは世界シェア30%という実績を持っています。
技術ニッチ戦略では、高い技術力を持っているという点でハードルが高いですが、業界内でもっとも知識や経験値を持っていれば強いポジションを得ることができます。
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これまで積み上げてきた経験のある会社(個人)向けの戦略ですね。
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チャネルニッチ戦略
チャネルニッチ戦略とは、ライバルの持っていない販売経路でビジネスを展開していく戦略です。
日本の生命保険会社に大同生命があります。大同生命は日本最大の税理士団体であるTKC全国会と提携して代理店契約を結んでいます。
TKC全国会は会員1万人と顧問先企業が55万社というとても大きな団体です。
一般的に税理士は生命保険の販売を手段の1つとして扱っていることや、販売すると手数料も入ってくるため、大同生命と利害を一致させることで独自の販路を作りだしています。
ライバルよりも早く独自の販売経路を持つことができれば、ライバルがどれだけ多くの資本を持っていたとしても参入が難しくなります。
こちらはライバルが見つけられていない販売経路を持っている、あるいは知っているのであれば有効的に使える戦略です。
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特に事業としての親和性が高いことが望ましいですね。今回の事例だと、保険会社と税理士はターゲットとする顧客が被らなくてニーズもあるという結果でした。
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特殊ニーズニッチ戦略
特殊ニーズニッチ戦略とは、一般的ではない特殊なニーズに対応した商品・サービスを提供する戦略です。
JINS(ジーンズ)というメガネのブランドがあります。
一般的にメガネと言えば「視力矯正用」ですよね。目が悪くなったらメガネを買います。
ですが、当時はパソコンを利用する人が急増していて、紫外線や青い光を遮断するPC用メガネ(ブルーライトカットメガネ)という特殊ニーズを満たす商品が大人気となりました。
JINSの販売しているメガネの中でPC用メガネは3分の1を占めるほど売れています。
特殊ニッチはニーズは表面化していることがないため、普段の生活者の実態を洞察することから見つけられるニーズとなります。
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パソコンで目が疲れることはあっても、まさかメガネで解決する発想は無かったですよね。
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同じような商品・サービスでも「見方を変える」だけで特殊ニーズを満たす価値になることだってあります。
JINSのポジショニング戦略も、最初からあった技術を市場ニーズに合わせて「PCメガネ」というカタチで販売して成功しました。
特定エリアニッチ戦略
特定エリアニッチ戦略とは、自社(自分)のビジネス活動エリアを大きく広げすぎないで集中させる戦略です。
セイコーマートは北海道に特化したコンビニです。1971年に酒屋から業態変更して日本では第1号のコンビニとなります。
北海道内のコンビニとしてはトップシェアを持っているのですが、セブンイレブンやローソンなどの競合の中でシェアを維持できている理由は以下の2つです。
- 北海道内から出ないことで希少価値を上げている
- 北海道のニーズをどこのコンビニよりも熟知している
- 競合がやりたがらないサービスを提供している
エリアを絞ることで、「ここでしか商品を買えない」という希少価値を高めると同時に、全国展開しているライバルよりも現地のニーズを熟知することができています。
また、セイコーマートは「ホットシェフ」という注文されてからカツ丼や豚丼を提供するサービスを提供しています。
セブンイレブンやローソンの場合はフランチャイズ加盟店から手間のかかるサービスへの反対も多くあるため真似ができないです。(セイコーマートは直営が多い)
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ちなみに伊勢名物の「赤福」もエリアを絞ることで希少性を出している成功事例ですね。
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期間限定ニッチ戦略
決まった期間だけ事業が集中するため、固定費が大きく掛かる会社は参入できない戦略です。
エイジスという棚卸しの専門業者がいます。棚卸しは決算時に必要な作業ですが限定的ですよね。
日本の大手流通業の6割はエイジスに棚卸しをアウトソーシングしています。
日本は3月が決算期である会社が多いため、棚卸し業務の繁忙期は2月と8月に集中します。
そのため、固定費が大きな会社はこの繁忙期と閑散期のギャップがあってなかなか参入できない領域となっているのです。
市場規模ニッチ戦略
市場規模が大きくないため資本のあるリーダー企業が参入してこない戦略です。
卓球をやったことない人にはメジャーではないのですが、タマスというプロ卓球選手専門のメーカーがあります。
この会社はバタフライという世界ブランドで展開しています。
タマスが進出する前から10社以上の卓球メーカーが市場に進出していたのですが、国際試合に出ているトップ選手の5割以上がタマスからの購入です。
タマスは一般人ではなく、トップ選手にターゲットを絞り込むという独自のポジショニング戦略をとったことによって事業を拡大させることができました。
年間で3億円以上をトップ選手向けの商品開発に投資してきてるそうです。
残存ニッチ戦略
時代の流れとともに市場規模が小さくなったことでライバルが撤退して、残った会社(個人)が利益を取っていく戦略です。
富士フィルムのインスタントカメラ「チェキ」はご存知でしょうか?
撮影するとその場で写真がプリントされて出てくるカメラです。このご時世であればデジカメやスマホでの写真撮影が一般的ですが、東南アジアやアメリカを中心に売れています。
なぜいまさら売れているのかというと、絵や文字などを撮影後にデコレーションする「コミュニケーションツール」としての価値があるからです。
現時点ではチェキを開発する技術を持っているのは世界で富士フィルムだけで、市場が衰退してしまっても十分な利益を生み出すことができています。
数量限定ニッチ戦略
会社(個人)が数量を限定して販売する戦略です。
市場規模ニッチは市場そのものが小さいのに対して、数量限定ニッチは市場規模に関係なく数量を減らしてプレミアム感を出すところが違います。
最近では数量限定が使われるカテゴリーは嗜好品が多いです。
秋葉原に行くとフィギュアやカードゲームが店頭にズラリと並べられているのですが、もともと生産量の少ないものに関しては数十万円で販売されていたりします。
心理的にも数量が少ないことで希少性を感じるため、相場価格よりも高く販売できるという点も特徴です。
カスタマイズニッチ戦略
完全フルオーダーで商品・サービスを提供する戦略です。
銀座山形屋というフルオーダースーツの老舗があります。
青山や青木のような既製品ではなく、デザイン・ボタン・裏地・ポケット・サイズなどをすべて個人に合わせてのカスタマイズです。
完全オーダーメイドの強みは、世界に1つのオンリーワンであることや個別ニーズの満足度を最大限に高められる点にあります。
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化粧品でもフルオーダーメイドで販売していますよね。
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ニーズが多様化している現代では、フルオーダーメイドのニーズは今後も高まっていくと予想されます。
切り替えニッチ戦略
先行で販売した商品・サービスに対して顧客が扱いになれてしまい、切り替えすることを難しくさせる戦略です。
例えば、スマートフォン市場は「iPhone(iOS)」と「Android」で2極化しています。
iPhoneとAndroidは操作性や利用できるアプリケーションに違いがあるため、一度どちらかを使い始めると慣れが生まれます。
そのため利用者目線で考えると、両者の切り替えは簡単にはできないような設計になっているのです。
この戦略は、顧客が商品・サービスの利用を習慣化してもらう必要があるため、いかにして日常的に使ってもらえるかという点がポイントになってきます。
不協和戦略4つの事例
不協和戦略について4つの事例をご紹介します。
会社資産の負債化
会社(個人)が持っている資産(ヒト・モノ・カネ・情報)を負債化させる戦略です。
インターネット専業の保険会社にライフネット生命があります。
生命保険会社は営業職員による販売活動が中心です。
なぜこのような営業職員を必要にしているかというと、保険に対してニーズを感じていない人が多くいるからです。
そこで、ライフネット生命は以下のような戦略を打ち出しました。
- 営業職員を持たないことで商品価格を下げた
- 保険をわかりやすくするために特約を廃止した
- 生命保険会社の手数料を公開した(保険業界ではタブー)
ライバルである生命保険会社は、ライフネット生命の戦略を真似しようとすると自社の資産が負債化してしまいます。
- 営業職員を解雇するのは難しい
- 収入源である特約を無くすと利益が減ってしまう
- 手数料を公開すると営業職員のコストが高いことがバレてしまう
そのため、ライフネット生命はライバルの追随を許さない独自のポジションを獲得することができたのです。
市場資産の負債化
市場資産の負債化とは、すでにライバルが市場に広めた資産を負債化させてしまう戦略です。
スマホ決済が誕生するまでは店舗設置型のレジ(POSレジ)が主流でした。
POSレジは電源供給が必要なので店舗に置く必要があります。ですが、実際に決済が必要な場面は店舗だけとは限りません。
例えば、旅行業者のツアーで途中から追加オプションに申し込みたくなる参加者もいます。その場合、わざわざ旅行業者は事務所まで戻って決済手続きをする必要があります。
そこで、店舗外の決済手段としてスマホ決済が使われるのですが、市場でPOSレジの資産価値が無くなってしまうため追従することが難しくなっているのです。
論理の矛盾化
これまでライバルが顧客に対して発信してきた論理と矛盾するような立場をとる戦略です。
論理が矛盾すると既存顧客からの信用を失ってしまうため、ライバルは路線変更することが難しくなります。
缶コーヒー市場では、朝に缶コーヒーを飲む人が40%いることが調査結果で分かりました。
そこで、アサヒ飲料は「朝専用」というポジショニング戦略を取った「ワンダーモーニングショット」を販売しました。
それに対して、ライバルであるコカ・コーラは「いつでも、どこでも」というシーンを絞らないポジショニングで「ジョージア」を販売を続けていたのです。
ワンダーモーニングショットを販売してから7ヶ月が経過して、ヒット商品の目安と言われる1,000万個も売れるようになりました。
そこでコカ・コーラは「ジョージア・モーニングコーヒー」という同じポジショニング戦略で臨みましたが「いつでも、どこでも」との矛盾が生まれすぐに市場から撤退しています。
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一度、認知されたポジショニングは簡単には変えられないものです。
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事業の共喰化(カニバリゼーション)
自社の商品・サービスが売上を減らすような事態となってしまうため真似できない戦略です。
10分1,000円でカットするQBハウスという理容室があります。時間効率に特化しているためカットのみで洗髪などはありません。
QBハウスは人通りの多い立地に店舗を構えて、これまで全世界で500店舗にするほどの急成長している事業です。
理容業界の相場は4,000円程度であったため、QBハウスと同価格帯にすると大幅な収入減になってしまうということでライバルが真似できませんでした。
最終的にはライバルが正攻法では勝てなかったため、洗髪台の設置を義務化させる規制を設けるようになりました。
QBハウスはカットのみなので、本来は洗髪台はいらないのですが、やむなく「使わない洗髪台」を設置して運営しています。
洗髪台が規制されてしまった結果、月の店舗売上が100万円も減ってしまったそうです。
協調戦略4つの事例
協調戦略について4個の事例をご紹介します。
中核機能を提供
自社(個人)の中核となる機能(能力)をライバルに提供する戦略です。
2005年に星野リゾートはゴールドマン・サックスと一緒に会社を起こして、リゾートホテルの再生事業に本格参入したことがあります。
バブル期にリゾート施設に参入した投資家や不動産会社は、開発利益(投機)を求めることが多くて、リゾート施設の運営には投資をしませんでした。
そのため、リゾート施設では運営に関するノウハウが蓄積されていないという背景がありました。
そこで、星野リゾートは「運営受託事業」へ本格的に乗りだしたことによって、これまで競合だったリゾート施設のオーナーと協業することができるようになりました。
一部機能を提供
ライバルの事業に対して、自社(個人)の中核となる機能(能力)を一部だけ提供する戦略です。
今でこそ当たり前のように使っているセブンイレブンに設置されているATMですが、銀行業界では「預金を集めず融資もしない銀行が成立するわけがない」と反対意見の多いものでした。
実際にセブンイレブンの収入源は、他行のキャッシュカードで引き出した際の手数料となっています。
三菱東京UFJや三井住友銀行など、自前でATM店舗をもっているとコスト高になりますが、全国コンビニに設置しているセブン銀行のATMと提携することで撤去することが可能となりました。
こうして他行は、自前のATM店舗を持たなくてもセブン銀行に手数料を支払うだけで、顧客にサービスを利用してもらえるWin-Winの関係を作ることができています。
新機能を提供
他社(相手)がすでに提供している商品・サービスに新しい機能を提供することで協業する戦略です。
インターネットで高速バスのチケットを購入できる「楽天バスサービス」があります。
このサービスができるまではバス会社ごとに調べてチケットを予約する必要があり不便でした。
ですが、楽天バスサービスというポータルサイトが提供されたことにより、Web上でバス会社のサービスが一覧化されるようになりました。
そして、ポータルサイト内でバス会社同士が競争するようになり、コンセプトやサービスの差別化を図ることでよりよいサービスが提供されるようになっています。
自社他社の混合
自社(自分)の商品・サービスの中にライバルの商品・サービスを一緒に販売する戦略です。
グリコは2002年から「オフィスグリコ」という商品を販売しました。これまでの実績で10万社に12万台を設置したお菓子BOXです。
もしかしたらオフィス内で見かけたことや利用されたことがあるかもしれませんね。
僕が昔勤めていた会社には設置されていて、カエルの口に100円を入れると「パクッ」と閉じて集金される仕組みです。
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お金を入れなくてもお菓子は取り出せる性善説に基づいたシステムでした。
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実はこのオフィスグリコは自社商品だけではなく、同業他社である「柿の種」や「キャンディー」を入れるなどして販売しています。
なぜ、あえて同業他社の商品を混ぜていたかというと、同じ会社のお菓子ばかりを食べていたら飽きてくるからです。
たしかに僕たちは普段から同じ会社のお菓子だけを食べているわけではないですよね。
グリコは、消費者目線で飽きさせないようお菓子の種類を豊富にさせて、他のライバルが入り込めないような市場を作ることに成功しました。
最後に
ポジショニング戦略の18の方法と事例をご紹介してきました。最後に簡単にまとめたいと思います。
- ポジショニング戦略は戦わずして勝つ戦略
- ライバル視点と顧客視点の両方で考える
- ポジショニング戦略は「ニッチ戦略」「不協和戦略」「協調戦略」の3つ
自社(自分)のポジショニングが決まって、初めてマーケティングミックスの4P(Price=価格、Product=商品、Place=流通、Promotion=販促)を検討することができます。
このポジショニング戦略ができれば、顧客により素晴らしい価値を提供することができ、ライバルに追随されない状態を作ることも可能です。
とても大切なパートですので、ぜひ事例を参考に実践してみてください。