あなたはブランディングの効果を、職場や取引先へ具体的にに説明できるでしょうか?
ブランディングの必要性は感じていても、具体的にどのような効果が得られるのかを理解していなければ、その施策は単なるマーケティング活動として失敗に終わってしまうことでしょう。
ブランディングは欧米だと、マーケティングよりも上位の概念として「ブランド戦略」という立派な戦略として取り入れられています。
アップルやGoogle、コカ・コーラなどはブランド戦略を取り入れている代表的な会社です。
「アップル」という英単語を聞いて、りんごではなくiPhoneやMacを想像してしまうのは、ブランドが確立している証拠を言えます。
残念ながら、日本はブランド戦略を軽視している会社が多くて、知名度や時価総額でも負けてしまっています。
そこで、この記事ではブランディングの効果を十分に理解いただけるような内容をお伝えしていきます。
目次
ブランディングによる時価総額
まず、最初に覚えていただきたいのは、ブランドには数値化された価値があるということです。
ブランディングには「ブランド価値」という時価総額と似たような指標が存在します。
10年以上前は日本もTOP10位にランクインしていたのですが、ここ数年は米国企業ばかりが並んでしまうようになりました。
(出典元:アメリカ部)
どれだけブランディングが必要であると言っても、仮にあなたが経営者ならば、計測可能な指標が無いとブランディングの効果は測定できません。何よりマネジメント不可能な博打に投資するこはできないはずです。
ブランディングそのものにも「数値化できる基準」が存在しており、しっかりと効果が証明されていることがわかります。
参考までにですが、経済産業省がブランド価値を評価する3つの基準を設けています。
- 価格プレミアム(ノン・ブランドより高いか)
- ロイヤリティ(継続して購入してもらえているか)
- ブランド拡張力(業種・業界を超えて拡大しているか)
ブランディング効果1:信頼感を高める
ブランディングをすることで顧客からの信頼感を高めることができます。
信頼感というのは「このブランドだったら間違いない」という顧客視点での感覚的なものです。
今では日常生活には欠かせないGoogleが、過去に「Googleグラス」の試作品を開発者向け限定に1,500ドル(当時の相場で約16万円)で販売していました。
それを一般向けにも同価格で販売するようにしたのですが、なんと数千人のユーザーが殺到して即完売という状況になったのです。
まさにこの結果は、Googleというトップブランドの信頼感によって得られた結果だということです。
信頼感のすごいところは、ブランドに対しての期待値が最初から加算されているところにあります。必要以上の広告を使わなくても認知され、購入意欲が高くなるため大きな売上が見込めます。
ブランディング効果2:自然災害などがあってもブランドは残る
ブランディングの効果で、会社や工場などの実物が無くなったとしても、ゼロイチで事業を起こすより復活が容易です。
一般的に資産というと、「お金」「オフィス」「デスク」「パソコン」などのような「目に見える有形資産」です。
でも、ブランドは「目に見えない無形資産」であり、一度作り上げると人の記憶や心に価値が累積されていきます。
そのため、未曾有の地震とか火災などで物理的な店舗や商品などが一時的に損失が出てしまったとしても、人の記憶の中には残っているので再生さえできればすぐに復活することだって可能です。
他にもテレビゲームなどで、新しい機種で復刻版が発売されたりしますよね。ドラゴンクエストとかファイナルファンタジーなど。
あれがなぜ何度も売れるかというと「過去の楽しかった思い出」という人の記憶に残っているからです。
老後になったら生まれ育った故郷に帰りたくなるというのもそうです。何かしらのポジティブな記憶などが人の中に残っている限りブランドにはずっと価値が残ります。
パーソナルブランディングという自分ブランドを確立している人であれば、ホリエモンさん、落合陽一さん、箕輪厚介さんは「見えない資産」を作り上げている代表格ではないでしょうか。
この人たちは「自分が商品ブランド」になっているので、どこにいても影響力を持つことができます。
つまり、ブランディングすることで場所・時間・空間に縛られないものになれます。
ブランディング効果3:ブランド力があるだけで差別化要因になる
強いブランドがあるだけで競合に対して優位性を持たせることができます。どれにしようか迷ったときに、自社(自分)が選ばれやすくなるのです。
「シャネル」や「グッチ」などの高級ブランドはその代表格です。
「シャネル」や「グッチ」はプロの職人さんが作っているわけですが、例えば同じ職人さんがノン・ブランドで類似商品を販売したとします。
すると、顧客はシャネルやグッチなどでは数十万という金額を支払うにも関わらず、ノン・ブランドになると婦人用品などで販売されているような商品価格と比較するようになるのです。
顧客に理由を聞くと、「シャネルやグッチだから」という単純明快なもの。
ブランディングすることで競合と比較することよりも、「このブランドが好きだから」「このブランドは私の自己表現として欠かせない唯一のものだから」という絶対価値になるということです。
ブランディング効果4:価格プレミアムで価格競争に巻き込まれない
ブランディングすると、業界の中でも価格プレミアムで販売することができるようになります。
価格プレミアムというのは、「同じ業界の類似商品よりも高額でいいから欲しい」という効果のことを言います。
事業の悩ましい要素の1つは、競合にすぐ同質化されてしまい、価格競争に巻き込まれることですよね。
自社ではこれだけの価値があると思っていたとしても、競合が値下げをすると同様に下げるしかなくなる場合も多くあります。
でも、ブランディングすることで価格競争から回避することが可能となります。
アップルのiPhone価格は、競合と比べて高いのはご存知かもしれません。
iPhoneは日本でのシェアは大きいのですが、世界的に見るとAndroidの方が大きくシェアを獲得しています。
iPhoneのシェアは世界のスマートフォンで約20%です。
それなのにも関わらず、iPhoneはスマートフォン市場全体の利益率でいうと2017年は86%、2018年は60%というシェアを誇っています。
品質や性能だけで言えば日本のAndroidの方がいいのですが、顧客の認識している価値がiPhoneの方が高いということです。
ブランディング効果5:購買までの意志決定が早くなる
ブランディング効果が高まってくると、ブランドに対しての安心感があるため購入までのスピードが格段に早くなります。
何か商品を決めるときに「どれがいいのかな?」、「どれが自分にとって一番必要なものなのかな?」ということにじっくり時間を掛けて悩みます。そして、値段が高ければ高いほど時間はかかるものです。
当然ですが、お金という対価を支払うために失敗をしたくないからです。
顧客は「ユーザーの評価レビュー」を見て自分と同じような人がいないか探したり、「会社の実績」で信頼できる会社であることを調べたりすると思います。
日本にいると安心できるブランドが多いため、あまり実感はないかもしれませんが、海外の途上国に行くのを想像してみてください。
例えば、アフリカに会社の異動で行くことになりました。長期滞在でどうしても避けられないのは食事です。
できれば食中毒にはなりたくないですし、もしも美味しくなかったらどうしようだなんて思うこともあります。
不安になったときに目の前にボロボロの「大丈夫か?」と思うようなお店がズラーっと並んでいたとします。その中に1つだけ有名ブランドが含まれていたらどう感じますか?
おそらく安全そうな有名ブランドを選ぶ確率は高くなるのではないでしょうか。
ブランドに対するイメージで「ここだったら大丈夫」とか「ここの商品は自分の価値観にあっていて好き」だという認識を顧客に持たせることができるということなんです。
つまり、同じような競合がいたとしても、しっかりと自社のブランドの価値を顧客へ認識させることができれば、商品を購入するまでの意志決定が早くなるということです。
ブランディング効果6:ジョイントベンチャーが増える
ある程度ブランドが向上してくると、一緒にビジネスをしたいというパートナーから、協業の提案が来るようになります。
ブランディングされていない場合だと自ら交渉しないといけません。
なお、ジョイントベンチャーをすることのメリットは以下のようなことが挙げられます。
- 成果を作り出すまでのスピードが早くなる
- パートナーの信頼があれば、その信頼を借りることができる
- パートナーの顧客に対してもアプローチすることも可能
ジョイントベンチャーをすることで、これまで自社の市場を大きく広げるチャンスに巡り会えるようになるのです。
最近では、個人レベルでもSNSなどで継続的に情報発信をすることで有名企業からオファーが来るということも珍しくありません。
当然組むパートナーにもよりますが、ジョイントベンチャーは事業の成長を加速させることができる有効な方法であり、それがブランディングすることで機会を得ることが可能となります。
ブランディング効果7:継続的な売上が見込めるようになる
継続的な売上を出し続ける、これがブランディングの効果で1番嬉しい要素ではないでしょうか。
多くの会社や個人が一時的には売上は出せても、継続していくことがどれだけ難しいのかは、会社の倒産する確率を見れば明らかです。
3年後に生存している会社は30%だと言われています。
効果的なブランディングができていないと、売上を伸ばすために延々と顧客を煽り続けるようなマーケティングをする必要があります。
そのために企業はPR活動(パブリック・リレーションズ)を行うのですが、フェラーリやスターバックスコーヒーなどは広告費を使わないで一定数のファンを増やすことに成功しています。
スターバックスコーヒーに関しては、カフェチェーン店の中では後発であったにも関わらず、市場シェア1位を取ることができました。
広告費を使わないで成功しているのは、フェラーリやスターバックスコーヒーが「独自の世界観」を徹底してコントロールしているからできていることで、そこに根強いファンが足繁く通うようになっているからです。
スターバックスの場合は「自宅」でもない「職場」でもない「第三の場所」というコンセプトで、長時間くつろげる空間を作り出しています。
僕も個人的にスターバックスは大好きなのですが、どこの店舗に行っても店員さんの接客は気持ちいいですし、内装は緑や茶色を基調色として落ち着いています。
しかも京都のような地域ブランドなどで出店しているスターバックスは、文化や景観に合わせて形を変えていて、その中にしっかりとスターバックスの個性を残しているのです。
いつ行っても同じ体験を味わえるからこそ、「また行こう!」って思えるような継続的な売上を生み出しているのでしょう。
まとめ
ブランディングで得られる7つの効果についてお話させていただきました。
最後に要点をまとめると以下の通りです。
- 信頼感を得ることができる
- 自然災害などで「見える資産」が無くなっても「見える資産」として残る
- 競争優位性が高くなり、顧客から優先的に選ばれるようになる
- 価格プレミアムで「同業種よりも高いお金を払ってでも欲しい」と感じてもらえるようになる
- 購入してもらえるまでの意志決定が早くなる
- ジョイントベンチャーが増えて信頼を借りられたり市場を広げやすくなる
- 一定数のファンが生まれて継続的な売上が見込めるようになる
どうしてもブランディングは感覚でしか認識することが難しい部分が沢山あります。
そのため、特に日本ではマーケティングなどと比べると軽視されやすいのですが、欧米のGoogleやアップルなどのトップブランドを見ていると重要性が理解いただけるかと思います。
時間はかかるものの、ブランディングすることで得られる効果は本当に大きいので、ぜひ活動の中にブランディングを取り入れるようにしてみてください。