ポジショニングはマーケティング戦略の手法の1つです。
専門書籍やネット情報だと難しい用語や表現が多いため、「これからポジションングを考えないと…」という初心者でも分かる内容で情報が欲しいものです。
なので、本記事ではなるべく難しい用語を使わないで次の内容を解説していきます。
- ポジショニングの意味と目的
- ポジショニングと同じような意味で使用される専門用語との違い
- ポジショニングの作り方
最後まで読んでいただくと、ポジショニングの理解がかなり深まる内容になっているはずです。
目次
ポジショニングの意味と目的
ポジショニングの意味は次の通りです。
ポジショニングの意味
- 独自の役割を果たし、特定カテゴリーでNO1になること
まずはポジショニングを理解するために、「独自の役割」と「特定カテゴリーでNO1」の2つのキーワードを覚えておきましょう。
ここではポジショニングって「NO1になることなんだ!」と理解してもらえればOKです。
そして、目的はこちら。
ポジショニングの目的
- 数ある競合の中から自社を優先的に選んでもらうため
情報が多すぎて商品・サービスをどこから選べばいいのか分からない時代です。
競合との違いを顧客に認識してもらい、自社の商品・サービスを選んでもらうことがポジショニングの最終目的となります。
独自の役割を果たす理由
ずばり、価格競争での消耗戦を回避するためです。
商品・サービスは「質と量」で決まりますが、それは「努力の方向性」が正しい場合に限ります。
競合と同じ路線で勝負した場合を考えてみましょう。
栄養ドリンクの例
【A】タウリン1000mg配合
【B】タウリン2000mg配合
これは同じ路線で「量」を勝負した例です。このまま続けたらどうなるでしょうか?次はタウリン3000mg配合ですかね。それとも量は変えずに販売価格を下げるか?
いずれにしても、顧客は完全に置いてけぼりです。1000mgか2000mgは良し悪しの判断ができないので。
そして「量」で勝負した結果、最終的には利益率や売上が悪くなって経営が悪化するのがオチなので、競合とは別の独自路線を探すのが「吉」です。
特定カテゴリーでNO1になる理由
これもとても重要です。NO1になる理由は、人の記憶に関係しています。
次の2つの質問の答えを頭に浮かべてみてください。
Q1.日本で1番目に高い山はどこでしょうか?
Q2.日本で2番目に高い山はどうでしょうか?
Q1.の答えはすぐに出てきたはずです。Q1.の答えは「富士山」ですね。
Q2.の答えは、よほどの山好きでなければ迷ったのではないでしょうか。Q2.の答えは「北岳」です。
覚えられないということは、選択肢に入らないということです。つまり特定カテゴリーでNO1になることは、同時に選択肢に入れてもらうという意味になります。
阿蘇山は何で有名なの?
阿蘇山は富士山とはカテゴリーが違うからです。
高さではNO1ではないですが、カルデラでNO1の知名度を誇っています。
これが「特定カテゴリーでNO1」になることの意義ですね。
同じ土俵でNO1になると資本力の勝負になります。無理に同じ路線で競争する必要はないので 、新しいカテゴリーを見つけ出しましょう。
ポジショニングと同じような意味で使われる専門用語との違い
マーケティング戦略を勉強していると、ポジショニング以外にも「コンセプト」とか「USP」とか似たような意味の専門用語に出くわします。
最初は僕も理解不能でしたのでご紹介しておきます。今後の活動に役立つはずですので。
ポジショニングとコンセプトの違い
ポジショニングの目的は「数ある競合の中から自社を優先的に選んでもらうため」でした。
コンセプトは、このポジショニングの目的を達成するための「実現方法」です。どんな商品・サービスがあればNO1になれるのか?を考えます。
上図の「カテゴリー」と書かれている部分が『ポジション=土地』です。黄色はすでに競合がポジショニングしている場所になります。
NEWカテゴリーを見つけ出し、そのカテゴリーNO1にふさわしい「コンセプト=家」を立てます。
なお、コンセプトについては、顧客を魅了するブランドコンセプトとは?|事例と必要性を徹底解説で詳しく解説していますのでご覧ください。
参考
左図の人から吹き出しが出ています。これは、人の頭の中がカテゴリー分けされているイメージです。ここはスゴく重要でして、ポジショニングは人の知っているカテゴリーから探す必要があります。
自動車がない時代はにフォードは「馬なし馬車」とポジショ二ングしたそうです。未知のものは、既存カテゴリーからポジショニングしましょう。
ポジショニングとUSPの違い
まず、USPの意味を簡単にご説明します。
U:Unique(独自の)
S:Selling(売り)
P:Proposition(提案)
USPの意味は、独自の売りを提案することです。
競合との違いが分からないと、顧客は判断できないので、こちらから競合には真似できない魅力を提案する必要があります。
コンセプトから生み出された「機能」や「特徴」などから、訴求できるメッセージに変換したものがUSPです。
上図だと「USP=看板」です。
「NEWカテゴリー」でポジショニングする場所を決めて、そこからコンセプトが定まったとしても、どのように顧客へ認識してもらうのか?のメッセージが決まっていません。
コンセプトは「家を立てる」作業で、USPは「看板を立てる」作業ですね。
ポジショニングの作り方【番外編】
ここからは番外編です。
ポジショニングの意味と目的が分かったら、実際にポジショニングを考えてみましょう。
ポジショニングを作る前に、「セグメンテーション」と「ターゲティング」という専門用語を知っておく必要があります。そんなに難しい意味ではないのでサクッと定義します。
セグメンテーションの意味
- 市場を細分化すること(分ける)
ターゲティングの意味
- 細分化した中から絞ること(選択)
要するに、市場を細かく分けてみて、その中から自社の強みを活かせる事業領域に絞るということです。もっと詳しく解説していきます。
セグメンテーションの考え方
セグメンテーションとは、市場を細分化する作業です。
例えば、「食事」の市場で考えてみましょう。
「食事」という大きな市場の中には「イタリアン」「フレンチ」「中華」「和食」などがあります。(他にもありますが省略)
さらに和食という市場からも、食事方法として「持ち帰り」「宅配」「外食」「自宅」といったように、市場を分けることができます。
このように、市場を様々な切り口で分けていくのがセグメンテーションです。
ターゲティングの考え方
ターゲティングは、セグメンテーションで細分化した市場の中から、どこに自社の資源を集中させるのか絞ることを言います。
市場を絞るのは、自社の資源(ヒト・モノ・カネ)を集中させて、自社と顧客が最大限の利益を生み出すためです。
分散させてしまうと、それぞれ市場を絞り込んで、資源を集中させている競合に勝つことができません。
ここでは「東京で働く20代の独身サラリーマン」をターゲットにしてみましょう。
ポジショニングの考え方
ターゲティングが決まったら、どのカテゴリーでポジショニングするのかを決めます。
上図だと「和食の持ち帰り」の市場に対して、自社は「おふくろの味」というポジショニングを狙っています。
ポジショニングが決めると次の戦略が立てやすいです。
東京で毎日残業で働き疲れているサラリーマンにとって、「おふくろの味」を体験してもらうために、どのような商品・サービスを提供すればいいのか?
どこで販売すれば、狙っているターゲット層の人が買いに来てくれるのか?などを、ポジショニングから具体的に検討することができます。
また、ポジショニングでやるべきことは、ターゲティングで絞った顧客の「頭の中にあるイメージ」と「自社の商品・サービス」を結び付けることです。
コカ・コーラの後発であるペプシ・コーラは「若者向けのコーラ」というポジショニング戦略によって、コーラ市場でNO2のシェアを獲得しています。
これはすでに多くの人の頭の中に「コーラ」というカテゴリーが存在していたから出来た戦略です。
つまり、ポジショニングは新しいイメージを作り出すことではなく、すでに顧客の頭の中に持っているイメージを自社の商品・サービスに結びつけるということです。
ポジショニングの別の事例(ハンバーガー編)
理解を深めるために、もう1つ事例をご紹介します。
ハンバーガー市場は激戦区ですね。現時点では、マクドナルドが「ハンバーガー市場」の中ではトップに君臨しています。
マクドナルドと同じく、チェーン展開しているモスバーガーはというと、ハンバーガーの中でも別カテゴリーで「できたて新鮮なハンバーガー」というポジションを獲得しています。
これは「美味しいハンバーガーを食べたい」というニッチなカテゴリーを見つけたことで、独自のポジショニングを獲得できた事例です。
モスバーガーは、注文されてからハンバーガーやポテトを作り始めるので、待ち時間はマクドナルドより掛かるものの、いつでも美味しいできたてを食べることができます。
マクドナルドやモスバーガー以外にも、「超高級なハンバーガー」というポジションを狙っているブラックカウズという専門店(東京都)もあります。
最高級黒毛和牛を使っているため、ハンバーガー1個2,500円ぐらいの価格です。1度だけ平日ランチで利用したことがありますが店内満席で賑やかでした。
ブラックカウズはハンバーガーの平均相場よりもかなり高めなのですが、満席であることからも一定数のニーズがあることが分かります。
このように、ポジショニングは1つの大きなカテゴリーの中にも複数の細分化されたカテゴリーが無数に存在していることが分かります。
細分化されたカテゴリーを見つけて、ポジションを見出すことが狙うべき場所です。それこそが「独自の役割」になるということです。
ポジショニングは早いもの勝ち
ポジショニングの決め手は細分化されたカテゴリーで一番乗りすることです。
特定顧客にポジションを獲得することはライバル業者も同様に考えています。ですので、いち早く顧客の頭の中にあなたのブランドを知ってもらう必要があります。
ポジショニングは自社がどのカテゴリーでポジショニングするのか決めるだけでは認識されません。認識されるような活動をすることで初めてポジションを獲得できるのです。
どんな市場でも必ず満たされていない「不」の領域が存在します。その「不」に対して積極的にポジションを認識してもらえるように活動していきます。
例えば、次のようなコミュニケーションを繰り返すことで、顧客からの認識を向上させられるようになります。
参考
- テレビ広告
- インターネット広告
- WEBサイト
- 接客
- SNSでの情報発信
- 商品・サービスの利用体験
まとめ
ポジショニングに関する情報をお伝えしてきました。
簡単にまとめておきます。
- ポジショニングは「独自の役割を果たし、特定カテゴリーでNO1になること
- ポジショニングは「セグメンテーション」と「ターゲティング」をしてから実施する
- ポジショニングは、ターゲットの頭の中にあるイメージと自社の商品・サービスを結び付けること
実際に知識を蓄えても意味はないので、とにかくポジショニングを検討していきましょう。おそらく色々な切り口が見つかると思いますが、ぶっちゃけ数をこなさないと新しいカテゴリーも見えてこないものです。
知識を蓄えたら、どんどんアウトプットしていきましょう!